1990年代に流行したBPR(ビジネスプロセス再設計)。時代の潮流に乗って業務プロセス改革に乗り出し、苦い経験をした経営者も多いのではないでしょうか。BPRには「PDCAサイクルを回して継続的な改善を行っていく」という概念がありませんでした。
このため、BPRプロジェクトは往々にして肥大化し、全社的な業務プロセス改善を余儀なくされ、結果的に失敗に陥ってしまうケースが相次いだのです。
現在、業務プロセス改革手法として注目されているビジネスプロセス管理はBPRから派生したものです。BPMにはPDCAサイクルを回す概念があり、小さく初めて大きくするという改革手法です。
従って多くの企業がBPMによって業務プロセス改革に成功し、億単位の費用削減や大幅なサービス向上を実現した企業もいます。
そんなBPMにおいて重要なことと言えば「業務プロセスのモデル化」と「プロセスの設計」です。モデル化によって可視化された業務プロセスに修正を加え、新たに設計していいくことで問題点の解決と業務効率化を実現していきます。
説明するのは非常に簡単ですが、言うほど容易ではないのがモデル化と設計です。
本記事では業務プロセス設計について触れていきたいと思います。
業務プロセスを設計するとはどういうことか?
「設計」と聞くと、新しいものをゼロから構築していく作業だとイメージしがちですが、業務プロセスにおける設計の基本は「添削」です。つまり、不要な業務をそぎ落としたり、必要な業務を付け加えたりして問題点を解決していきます。
ちなみに「添削」にはシステム化も含まれており、人手によって行われている業務を時にシステムで自動化したり、業務アプリケーションの処理を簡略化するといった設計もあります。
具体的にどういった視点で設計を行っていけばいいのか、参考までに以下に記載します。
- 統合・廃止
データ統合による業務効率化を行ったり、業務プロセスの円滑な流れを阻害するような行為を廃止する - 簡素化・削除
決裁関与者を縮小したり、中間経由や集約事務を削除して簡素化する - 確実化・厳密化
システムによる記入項目のチェックで業務を確実化したり、未処理者の警告やアラートで業務を厳格化する - 集約・集中
ポータルサイトや掲示板によって情報の集約しコミュニケーションコストを下げる - 分散化・自己責任化
月末処理から日次・週次処理への変更したり、ポータルサイト情報の能動的な確認で自己責任化を促進する - 連携・同時処理
各業務システムの連携によるデータ入力作業などを行う - 効率化・自動化
各種帳票の自動生成や入力支援によりミスを防止する - 標準化・パターン化
非定型処理をパターン化してそれに応じてマニュアルを作成する
業務プロセス設計のスタートは「ゴールから始める」?
経営戦略や業務管理のスペシャリストとして知られたドラッガー(本名ペーター・フェルディナンド・ドラッカー)は、自身の著書の中で次のように述べています。
「仕事の分析は作業の特定から出発するわけではない。まずは、求められる成果が何かを見きわめなくてはいけないのだ。」
引用:「マネジメント 務め、責任、実践2 (日経BPクラシックス)」
つまり、いきなり業務プロセスのモデル化から始めてはいけないということで、最終的なゴールを設定した上で、逆算的にマイルストンを設定してから必要な業務プロセスのみをモデル化し、設計していくということです。
まさに「ゴールから始める」という言葉がピッタリくるのではないでしょうか。
実はBPM活動ではこの考え方が非常に重要なのでぜひ念頭に置いていただきたいと思います。冒頭でも述べましたが、業務プロセス改革にはPDCAサイクルによる継続的な改善が大切です。
しかし、ゴールが定まっていない状態でBPM活動をスタートしても、1990年代のBPRのようにプロジェクトを肥大化し、気づけば全社的な業務プロセス改革に発展してしまいます。だからこそまずゴールを設定し、そこに向けた最短距離を繰り返していくということが大切なのです。
業務プロセス設計を容易化するためには?
BPM活動における業務プロセス設計は簡単ではありません。業務プロセスをモデル化した後に定量的・定性的分析を行い、問題点を洗い出した上で効果的な対策と設計していく必要があります。
初めてBPM活動に取り組む企業にとって、これは大きな負担です。かといって、業務改善をコンサルタントに依頼するのはコストがかかります。
そこで注目されているのが、BPMシステムを導入することでBPM活動を支援するというアプローチです。
BPMシステムとは文字通りBPM活動を推進するためのITツールで、BPM活動の様々な作業を容易化するためにあります。
例えば「モデリング機能」は、BPMI(ビジネスプロセスモデリング表記)という規格に準拠して、業務プロセスのモデル化を行います。GUIベースでグラフィカルに作成できるため、モデリングに関する深い知識がなくとも作成できるため、部門間をまたいだ共通言語として活用することができます。
「モニタリング機能」は展開した業務プロセス設計が正常に機能しているかを監視し、「ビジネスプロセス分析」機能によって円滑なフローを阻害している原因を特定します。
この他にも「ビジネスルール管理」や「非定型処理ケースマネジメント」によって、企業のBPM活動を支援します。
まとめ
IT技術の進化や社会情勢の変化によって、今後すべての国内企業に「変革の時」が訪れます。BPM活動を推進することは業務プロセスを最適化するだけでなく、いざ変革の時を迎えた際も、環境変化へ柔軟に対応できる組織力を作ることにもなるのです。
まずはBPM活動のゴールを設定し、そこに向けた業務プロセスモデリングと設計を行ってみてください。その際は、BPMシステムによる効率的な作業進行をぜひご検討ください。