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交通・物流

ドローン物流とは? 導入のメリットや事例、課題を解説

さまざまな分野において活用が進んでいるドローンですが、物流業界でも注目を集めています。ドローン活用によって、物流業界が抱えるさまざまな課題を解決することができると考えられています。本記事では、ドローン物流の概要やメリット、課題、具体的な事例などを解説します。

ドローン物流とは? 導入のメリットや事例、課題を解説

ドローン物流とは

ドローン物流とは、荷物の輸配送にドローンを活用する手法です。従来、荷物の輸配送にはトラックを用いるのが一般的でしたが、物流業界が抱えるさまざまな課題の解決につながるとして、ドローン物流に注目が集まり始めました。

また、GPSやカメラ、センサーなどを搭載したドローンを用いて、物流倉庫の在庫管理に活用するケースも増えています。倉庫内を飛行するドローンによって、在庫確認や荷物のピッキング、補充などが可能です。

ドローンなら、昼夜を問わず荷物を配送できる点が大きな魅力です。それゆえ効率的な荷物の配送を実現でき、配送スタッフの負担軽減にもつながります。また、カメラやセンサーを搭載した機種であればデータの収集や蓄積もでき、あとから分析にも活用できます。

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国土交通省がドローンを活用した配送ガイドラインを発表

これまでは、法律の問題から有人地帯における目視外飛行が困難でした。しかし、2022年に航空法が改正され、レベル4飛行が可能になりました。レベル4飛行とは、有人地帯における目視外飛行のことであり、操縦者がドローンを目視できなくても、人がいる場所で飛ばせることを意味します。

こうした背景もあり、国土交通省は「ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドラインVer.4.0」をリリースしました。レベル4飛行が解禁になったことを踏まえ、ドローン物流のさらなる普及と浸透を目指してのことです。

このガイドラインには、サービス内容、採算性の確保、航空法に基づく安全性の確保といったコンテンツが含まれています。ただ、これらの内容は不変ではなく、状況の変化に合わせて適宜見直しと改善を図るとされています。

参照元:ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドライン4.0

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ドローン物流が注目される背景

農業や林業、建設業などさまざまな業界でドローンの活用に注目が集まっています。物流業界においても例外ではなく、業界に介在するさまざまな課題の解決につながると期待されています。

関連記事:物流業界の現状と課題とは?

高齢化による人手不足

日本の少子高齢化は著しく、大きな社会問題となっています。それに伴い労働人口も減少の一途をたどっており、物流業界においても深刻な人手不足を招いているのが現状です。

国土交通省が公開している資料「トラック運送業の現状等について」を見てみましょう。同資料によると、トラックドライバーの有効求人倍率は平成30年4月時点で2.68となっています。これは職を探す人よりも、人材を求める企業の方が多いことを示しています。

また、トラック業界における就業者の約45.2%は40~54歳で、29歳以下は全体の10%以下との調査結果からも、高齢化が進んでいることは明らかです。

参照元:国土交通省「トラック運送業の現状等について」

ネットショッピングの普及による需要上昇

インターネットやモバイル端末が普及し、それに伴いECサイトの数も爆発的に増えました。現在では、誰もが日常的にネットショッピングを利用する時代です。ユーザーの生活がより快適かつ便利になった反面、物流事業を営む企業の多くが業務量の増加に頭を抱えることになりました。

ネットショッピングが広く普及したことで、個人宅への小口荷物配送が増えたことが大きな問題です。従来よりも1日あたりの配達件数が大幅に増加し、従業員にも過度な負担が生じています。

再配達による業務負担の増加

物流企業を悩ませる問題のひとつが再配達です。荷物を届けに訪れたにもかかわらず不在となると、再度配達に足を運ばなくてはならず、二度手間が発生します。場合によっては、再配達どころか再々配達になることもあり、余計な業務負担が増加してしまいます。

国土交通省が公表した「実態調査に基づく再配達率の推移」によれば、令和2年10月時点で11.4%が再配達になっており、令和3年10月では11.9%、令和4年4月では11.7%との結果です。

ユーザーにとって再配達は便利なサービスですが、物流企業にとってはできるだけ削減したいのが本音です。再配達が多いと、余計な燃料を消費することになるばかりか、業務の非効率化も招きます。従業員にかかる負担も増えてしまうなど、再配達の増加が及ぼす影響は決して小さくありません。

参照元:国土交通省「宅配便の再配達削減に向けて」

迅速な配送スピードに対する需要の拡大

ネットショップやECサイトが増加したことで、競争もどんどん激化しています。ほかのECサイトと差別化を図るべく、即日発送や翌日配送などをアピールするところも増えました。

スピード感ある配送が求められるようになった結果、物流企業にしわ寄せがきているのが現状です。期日に間に合わせなくてはならないことから、ドライバーは精神的なプレッシャーを抱え、間に合わなかったときには直接クレームを受けることもあります。

また、近年は物流量の増加に伴う交通渋滞が発生しやすくなっていることもあり、スピード配送に対応できないケースも出てきました。

燃料の高騰

かつては、1リットルあたり100円を切る価格でガソリンや軽油を購入できましたが、それはもはや過去の話です。オイルショックやリーマンショック、新型コロナウイルスの世界的な流行、ロシアのウクライナ侵攻などを経て、燃料の価格は驚くほど高騰しました。

現在、ガソリンは1リットルあたり約150~180円、軽油は約130~160円です。業務にトラックを使用する物流企業にとって、これは大きな痛手です。

トラックを走行させるための燃料が高騰すると、経費が余計にかかります。結果的に利益を圧迫し、事業の継続すら危ぶまれる状況に陥るかもしれません。燃料の高騰に伴う配送料の値上げを行えればよいのですが、これも現実的ではありません。つまり、このような状況下でも物流企業は黙って我慢するしかないのが現状です。

物流業界にドローンを導入するメリット

物流事業を営む企業がドローンを導入すれば、人手不足の解消や配送スピードの向上などを実現できるメリットがあります。また、過疎地や災害地へもスピーディーに物資を届けられるため、他社との差別化にもつながります。

人手不足の解消

ドローンを導入すれば、人手不足の解消につながります。物流ドローンは無人で飛行し目的地へと向かうため、操縦者が必要ありません。新たに配送スタッフを雇わずとも、設定した目的地へドローンが自動的に配送を行ってくれます。

また、人件費の削減につながるのも大きなメリットです。物流企業が事業を営むうえで発生する経費は多々ありますが、大きなウエイトを占めるのが人件費であることは間違いありません。十分な数のドローンを導入すれば、少ない人員で業務を回せるようになり、トラックドライバーも削減できます。その結果、大幅な人件費カットが可能です。

人件費を削減できれば、余剰資金を用いて既存従業員の給与をアップする、研修を充実させるといったことが可能となり、離職率の引き下げにもつながります。

配送スピードの向上

飛行するドローンであれば、交通渋滞に巻き込まれる心配もありません。交通事故や取り締まりなどによるイレギュラーな交通渋滞が発生しても、トラックのように巻き込まれることがなく、目的地まで最短距離で荷物を配送できます。

空には障害物がありません。信号もなければ、前を走行する自動車やバイクもないため、スムーズに目的地まで到達できます。配達時間を大幅に短縮できれば、1日あたりに配送できる荷物の数も増え、さらなる生産性の向上にもつながります。

ドローンの導入によって、即日発送や翌日配送どころか、1~2時間以内に配送といったサービスが可能になるかもしれません。このようなサービスを提供できれば、他社との明確な差別化ができ、競合の追随を許さない組織へと進化できます。

過疎地や災害地への生活支援

山間部や離島など、過疎地には十分な物流網が整備されていないケースもあり、住民が不便を強いられていることも珍しくありません。ドローンを活用すれば、このような地域への配送も容易です。

トラックによる配送が難しい山間部や離島であっても、ドローンなら何も問題ありません。道路が狭かろうとも海を渡る必要があろうとも、空を飛べるドローンであれば問題なく荷物の配送が可能です。

また、災害地へ支援物資を運ぶ際にもドローンは活用できます。災害の規模によっては、道路が使えなくなりトラックで物資を運べないケースも出てきます。このようなときでも、空を飛べるドローンであれば災害地への支援物資を運搬可能です。

ドローン物流の課題

物流事業を営む企業がドローンを導入することで得られるメリットは多々あるものの、ドローン物流にはいくつかの課題もあります。導入を検討しているのなら、メリットだけでなく課題も理解しておきましょう。

安全性の確保

もっとも懸念すべき点は、ドローン運用時における安全面です。トラックを用いた配送でも安全性の確保は最重要事項ですが、空を飛ぶドローンは、より安全性への配慮が求められます。万が一、飛行中のドローンが墜落したとなると、甚大な事故につながるおそれがあるためです。

安全性を確保する取り組みとしては、機体の整備と点検の徹底が挙げられます。定期的な点検と整備を行うのはもちろん、飛行前の入念なチェックも必要です。

また、天候の変化にも注意しましょう。突然の豪雨や強風、雷雨などにより、ドローンの運行に影響を及ぼすケースが考えられます。機体の故障や、それに伴う墜落事故の発生も考えられるため、飛行前に天気予報を念入りに確認するなどの対応が必要です。

交通インフラの整備

今後、ドローンを活用するケースは増加すると考えられるため、陸地と同じように空の交通インフラ整備も必要です。現在ではまだ明確なルールが存在しないため、空を飛ぶドローンが増加すると、ドローン同士による衝突事故などが頻発してしまうかもしれません。

また、人や建物が密集する都市部での運用は、大きな事故が発生しかねないため、法整備も求められます。カメラ搭載型のドローンであれば、住宅のベランダで干してある洗濯物や住民の姿が映りこむことも考えられるため、このような問題にどう対処するのかも考えなくてはなりません。

破損・盗難の対策

飛行中のドローンが、何かしらのトラブルで墜落してしまうケースが考えられます。墜落したことで荷物が破損したとき、誰が責任を負うのかも考えなくてはなりません。また、盗難目的で飛行中のドローンを墜落させる、といった事件が起きたとき、責任の所在がどこにあるのかも明確にする必要があります。

墜落や盗難だけでなく、天候への対処も必要です。ドローンは、段ボールに梱包された荷物をそのまま運搬するケースが多いため、突然の雨や雪により箱が濡れるおそれがあります。雨や雪から荷物をどう守るのか、雨や雪で荷物がダメージを負ったとき、誰が責任をとるのかも明らかにしておきましょう。

ドローン物流の開発・運用を行う企業の事例

Amazon Prime Air| 30分以内に荷物の発送が可能

「Amazon Prime Air」は、世界的な知名度を誇る大手ECプラットフォーム「Amazon」がリリースしたサービスです。約10年もの時間をかけて構想を練ってきたサービスであり、約2.2kg以内の荷物をドローンで配達します。

1時間以内を目安に配送することをアピールしている本サービスですが、いずれは30分以内の配送を実現すると公言しています。本サービスのために独自開発されたドローンには、安全性を高めるための衝突回避システムが搭載されており、これにより飛行中に障害物と遭遇した場合でも、自ら回避行動を起こし衝突を回避できます。

そら楽|ゴルフ場での物資運搬サービス

大手ECモール「楽天市場」を擁する「楽天」がリリースした物資運搬サービスです。一般へ提供するドローン物流サービスとしては世界初であり、完全自律飛行ドローンを用いた目視外飛行運用が特徴です。

本サービスの第一弾プロジェクトとして、ゴルフ場での運用が始まっています。広大なゴルフ場では、プレイ中に軽食や飲み物が欲しくなっても簡単に入手できません。本サービスは、ユーザーがスマートフォンで注文をすると、ゴルフ場内に設置されたデポ(受け取り場所)へドローンが品物を運んでくれるため便利です。

SkyHub|山梨県でドローン配達サービスを開始

山梨県小菅村は周囲を森林に囲まれた山間の村で、そこで暮らす人々は日常的に不便な生活を強いられていました。村内には買い物をできる商店などがほとんどなく、わざわざ近隣の市街地まで出かけなくてはなりませんでした。

このような状況を打破しようと立ち上げられたのが「SkyHub」です。さまざまな品物をまとめて村内のドローンデポへ運び、そこからドローンを用いてユーザーのもとへ荷物を届けるサービスです。約300にも及ぶ食品から購入したい品物を選べるとあって、住民の生活は大きく変化しました。現在は、さらなるルート拡大や通信状況の改善などに取り組んでいます。

ドローン物流に関する取り組み事例

都市部の取り組み事例|医薬品配送実験を実施

東京都内では、ドローンを用いた医薬品配送実験が実施されました。複数の大橋を横断した医薬品配送実験であり、日常的にドローンで医薬品を届けられる社会を目指すための取り組みです。今回の実験では、できるだけリスクを減らすため、隅田川の上空を飛行しました。

ドローンによる医薬品配送が実用化されれば、緊急で医薬品を求める医療機関へもスピーディーに配送できます。今後は、受け取り確認システムの作成なども進め、新たな物流網の構築を実現したいと考えているとのことです。

山間部の取り組み事例|高度差における物資配送実験に成功

高度差のある山岳エリアへのドローンを用いた物資運搬実験も行われています。アクセスの悪い山小屋への新たな物流インフラ構築が主な目的です。

高度差約1,600mと過酷な環境の中、ドローンは見事目的地に到着しました。もちろん、荷物に破損などもありません。従来、山小屋へは歩荷で約7時間かかっていましたが、ドローンでは約15分と大幅な時間短縮に成功しました。今後は、天候不良の場合でも安全に物資を運搬できるよう改良を進めるとのことです。

離島の取り組み事例|島での生活しやすさ維持と航路維持の両立を目指す

離島へのスムーズな物資運搬を目的とした取り組みもスタートしています。大分県のある離島は、交通手段が限定的であり、近隣の市街地との距離は往復32kmもありました。船も1日に1~2便しかなく、住民は不便を強いられていました。

このような状況を鑑み、離島における生活の利便性確保を目指し、ドローンを用いた実証実験がスタートします。ドローン投入後は、船舶とドローンを併用した効率的な物流インフラを構築でき、人々の生活も便利になりました。今後の課題は、高額な配送料をどのように抑えていくかです。

まとめ

ドローン物流によって、従業員の業務負担軽減やコストダウンにつながるほか、スピーディーな配送も実現できます。一方で、安全性の確保や交通インフラの整備など、いくつか課題があることも覚えておきましょう。ドローン物流に関心があるのなら、すでに実用している企業の事例なども参考にしつつ検討を進めていきましょう。

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