ビジネスプロセス管理に限らず、様々なシーンでビジネスプロセスのモデリングは必要です。例えば皆さんが自社業務のフローやプロセスごとの関連性を把握したいと考えた場合、モデル図を作成することになるでしょう。
また、現ビジネスプロセスを組織全体で共有したり、標準化するためにもモデリングは用いられます。つまりビジネスプロセスを改善する上でモデリングはまず取り組むべき作業だと言えるでしょう。
今回はそんなビジネスプロセスモデリングについて、概要や種類、そして目的などを紹介していきます。
ビジネスプロセスにおけるモデリングとは?
「モデリング」という言葉にピンと来る方は少ないと思います。一部のIT技術者を除いては、ビジネスプロセスのモデル図を作成するという機会がかなり稀であるためです。
では「モデリング」とは何でしょう?
そもそも「モデル」という言葉に対して説明すると「模型」や「模範」という意味があります。ビジネスプロセスにおいては「模範」という訳が適切でしょう。
つまり「模範を作成する」というのがモデリングなのですが「何の模範を作成するのか?」というのが重要になります。
ビジネスプロセスにおける「模範」とは業務の流れや方法、あるいは条件分岐など誰が見ても一目瞭然に理解できる、業務プロセスを図式化したものです。
まとめると、模範となるビジネスプロセスを図式化し明確にしたものがモデリングとなります。次に、実際に現場で使用されているモデリング手法についていくつか紹介します。
なぜモデリングが必要なの?
BPMにおいてモデリングが必要な理由は、BPM最初の手順に「ビジネスプロセスの可視化」が求められるためです。社内の業務プロセスを全て把握し、かつプロセス間の繋がりを明確にするためにはプロセスの可視化が不可欠です。
従ってBPM実践では既存のビジネスプロセスを可視化するところから始まります。
様々なモデリングの種類
BPMI(ビジネスプロセス管理)
BPM(ビジネスプロセス管理)において最も基本的なモデリング手法であり、世界標準(ISO19510)になっていることから世界的に最も使用されている手法でもあります。
BPMIが初めて公表されたのは2004年5月で、他のモデリング手法と比べるとまだまだ歴史が浅いのが特徴です。しかし、だからこそ様々なモデリングの特徴を取り入れて最適化されてきました。
また、BPMにおいて基本的とされているもう一つの理由は、ビジネスプロセス駆動の開発言語であるBPEL(ビジネスプロセス実行言語)に直接落とし込めるという特徴があります。
例えばBPMシステムで作成したBPMIを、システム開発に直接利用することができるため、開発期間を大幅に短縮することが可能です。
≪BPMIの図≫
引用:「BPMN 超入門」
EPC(イベントドリブンプロセスチェイン)
EPCはBPMIに続く基本的なビジネスプロセスフローを作成するためのモデリング手法で、Microsoftが提供するOfficeアプリケーションのVisioでもテンプレートが用意されていることから作成したことがある方も多いかと思います。
ただし、BPMに最適なモデリング表記かと言うとそうではありません。部門間をまたがるビジネスプロセスの可視化や関連性を示す際は、やはりBPMIが最も最適だと言えます。
≪EPCの図≫
AD(アクティビティ図)
ADはシステム開発において頻繁に利用される、実行の一連の流れを図式化するモデリング表記です。基本的な表記方法についてはBPMIに類似していますが、ポイントは「システム処理を可視化する」ことに特化したものであり、ビジネスプロセスを表記するには適していないことです。
≪ADの図≫
引用:「アクティビティ図(Activity Diagram)」
EA(エンタープライズアーキテクチャ)
EAは官公庁が中心として取り組んでいる事業戦略やシステム開発、並びにビジネスプロセスなど全体的なフローを可視化するための表記方法です。BPMIやEPCなどよりも大規模なプロセスを可視化し、主に全体最適化を図るために用いられます。
≪EAの図≫
引用:「EA(Enterprise Architecture)を学ぶ Part1 EAの概念とフレームワーク」
産能大方式
産能大方式は日本で最も古くから使用されているビジネスプロセスのフローを作成する表記方法で、今なお現役で活躍しています。産能大方式の特徴は「精緻なルール」であり、明確な作成ルールが定められているので、産能大方式を見れば業務の流れを全て把握できるほど優れたフレームワークでもあります。
しかし、習得に時間と経験が必要であるため、「汎用さ」が求められるBPM取り組みにおいては適さない可能性があります。
≪産能大方式の図≫
モデリング方法を統一する目的
BPMを実践する上で、関係者がそれぞれ使いやすいモデリング方法を使用すると、100%問題が発生します。まずモデリング方法を統一していないことで、各モデル図を統合する際に特定のモデリング方法に全て変換しなければなりません。
これは当然かなりの時間を費やしてしまうので得策ではないでしょう。
また、モデリング方法を統一していないことでモデル図を明確に理解できない場合があり、ビジネスプロセスを適切にモデリングできない可能性もあります。
従って組織間でモデリング方法を統一し、ビジネスプロセスを可視化させることが重要です。
まとめ
今回紹介したモデリング手法の中でも、BPMを実践する上で最適なのがBPMIです。BPMIには産能大方式のように精緻なルールが設けられ多様な記号が用意されていますが、IT業務に従事していないビジネスマンでも簡単に作成できるのが特徴です。さらに、BPELに落とし込めるという利点がやはり大きく、皆さんのBPM実践を大きく支援してくれます。
BPMIは多くのBPMシステムが持つ「モデリング機能」で準拠されています。従ってBPMシステムを導入すれば、複雑かつ大量に存在するビジネスプロセスをGUIベースで直感的に作成することができるのです。
ビジネスプロセスモデリングは時間を多く費やす部分でもあるので、BPMシステムによる効率化が非常に効果的です。BPMを実践する際は、同時にBPMシステムの導入についてもぜひご検討ください。