ビジネスプロセス管理(BPM)を推進する上で「ビジネスプロセスモデル」の作成は欠かせません。しかし、「ビジネスプロセスモデルって何?」という方が大半なのではないかと思います。「ビジネス」「プロセス」「モデル」というそれぞれの言葉自体が多様な意味を持っているので、確かにビジネスプロセスモデルと聞いても曖昧にしか理解できないのは頷けます。
しかし、ビジネスプロセスモデルについてきちんと理解していなければBPM促進は有り得ません。
そこで今回はビジネスプロセスモデルについてわかりやすく説明していきます。まずはBPMの基本からおさらいしていきましょう。
BPM(ビジネスプロセス管理)とは
今や業務改革のキーワードとして欠かせないBPMですが、日本BPM協会ではBPMを次のように定義しています。
「BPMは、業務プロセス(手順、役割分担、ルール)を、役割分担している関係者で共有することで、日々の業務の成果を向上させる経営手法です。 」
引用:日本BPM協会「BPMとは」
もう少し具体的に定義すると、BPMは現場での仕事の進め方(ビジネスプロセス)に焦点を当てて、継続的な改善サイクルと適切な業務遂行をマネジメントすることです。
そのために新たなビジネスプロセスを規定し、ITなどを活用してビジネスプロセスのフロー作成や自動化を行い、その後の経過をモニタリングすることで継続的な業務改善へと繋げていきます。
つまり、ビジネスプロセスを規定することがBPM取り組みの第一歩と言えます(厳密にはそれ以前にモデル図作成がありますが)。
「ビジネスプロセスモデル」って何?
それでは本記事の主題でもあるビジネスプロセスモデルについて解説していきます。
「ビジネス」は業務や事業、「プロセス」は過程や工程というのは何となく理解できますが、では「モデル」とは何を示しているのでしょうか?
「モデル」と聞くと一般的に「プラモデル」や「ファッションモデル」といった言葉、あるいは「ビジネスモデル」などを思い浮かべる方が多いでしょう。前2つに関しては言わずもがなビジネスプロセスモデルとはまったく関係がないので忘れてください。
ではビジネスモデルはどうでしょう?意味としては「利益を生み出す事業戦略や収益構造」、すなわち「利益を生み出す仕組み」となります。近しいように感じますが、こちらもビジネスプロセスモデルとは似て非なる言葉ですね。
ここで一度「モデル」という言葉の意味を振り返ってみます。
「モデル」には模型、規範、手本という意味がありますが、この中でもビジネスプロセスモデルに最も近い意味合いは「規範」です。
規範とは「判断・評価・行為などの、拠(よ)るべき規則・規準」であり、「特定の事を抽象化して全体を把握する」と言い換えることができます。そしてビジネスプロセスモデルとは、まさにビジネスプロセスを抽象化した全体像を体系的に示したものなのです。
噛み砕いて言えばビジネスモデルとは「特定の目的に沿って仕事の過程を具体的に表した図」となります。
ビジネスプロセスモデルの目的とは?
ビジネスプロセスモデルを作成する目的としてよく言われているのが「現状を可視化する」などがあります。しかし、我々は自分が今行っている業務の内容もフローも知っていますし、「こうすれば改善できそう」というイメージも何となく持っているはずです。
ではなぜビジネスプロセスモデルが必要なのか?それは、関係者間で共通認識のもとビジネスプロセスを明確にするためとなります。
BPMではこの「共通認識のもと」というのが非常に需要です。各関係者が異なった認識でBPMへ取り組んでいる場合、トラブルは絶えず、まともに業務改革を行っていくことはできません。
そしてビジネスプロセスモデルは図式化されていることも非常に重要です。現場に置かれているマニュアルなど明文化されているビジネスプロセスも立派なビジネスプロセスモデルと言えますが、「曖昧さ回避」という点においてはやはり図式化されたビジネスプロセスモデルの方が優れています。
関係者全員が直感的にビジネスプロセスを理解できるようなモデル図がなければBPMは促進できません。
BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記)ってどんなもの?
ビジネスプロセスモデルを作成する上でよく使用されているのがBPMNです。BPMNとは2004年5月にBPMI(ビジネスプロセス管理イニシアチブ)によって発表されたモデル図の表記方法で、現在では世界標準(IOS19510)として規定されています。
引用:日本BPM協会「BPMとは」
BPMNには次のような特徴があります。
- ・BPMNの歴史は浅く、その他の表記方法の様々な利点を取り入れている(UML Activity Diagram, IDEF, ebXML
BPSS, ADF Diagram, EPCs など) - ・図形の種類自体は多いが、少ない種類で複雑なビジネスプロセスを表記できる
- ・一般ユーザー、IT技術者、ビジネスアナリストが共通の認識のもと、ビジネスプロセスの分析から設計、実装ま
でを行うことができる - ・プロセスドリブン(駆動)言語であるBPELへ変換できるためBPMNをシステムとして実装できる
BPMNは一般的に専門知識が必要なモデリング表記法だと認識されていますが、実はモデル図を作成するだけなら誰でも簡単にできてしまいます。ただ、部門間をまたがる複雑なビジネスプロセスを可視化するためにはITソリューションを導入する必要があります。
BPMNでビジネスプロセスモデルを作成するには?
最後に、BPMNでビジネスプロセスモデルを作成する方法について簡単に解説していきます。
先ほども掲載した画像を参考にすると、BPMNでのビジネスプロセスモデルはまず「細線丸」から始まります。これはイベント発生の起点を意味しており、ここからビジネスプロセスがスタートするということです。
そして画像右端を見ると「太線丸」が描かれていますが、これが ビジネスプロセスの終了を意味します。細線丸から太線丸の間を「四角形」や「菱形」、「矢印線」や「点線」などが羅列していますが、それぞれがビジネスプロセスを構成するタスクやフローを意味しており、一つのビジネスプロセスを表しています。
この画像で紹介されているビジネスプロセスはあくまで例であり非常に簡易的なものなので、実際はもっとも複雑に様々な図形や線が並びます。このため、ビジネスプロセスモデルを作成するには、やはりドラッグ&ドロップで作成できるBPMソリューションの導入が必要になるでしょう。
まとめ
いかがでしょうか?知ってしまえば明確に理解できるビジネスプロセスモデルですが、曖昧に理解したままでBPMを推進するのは非常に危険です。正しいビジネスプロセスモデル作成がBPMに成否を決定すると言っても過言ではありません。
ですので、皆さんにはここで紹介したビジネスプロセスモデルについての基本知識と、BPMNによるビジネスプロセスモデル作成を容易にするBPMソリューションを持って、効果の高いBPMを実践していただきたいと思います。