プロダクトデザインは商品の見た目だけでなく機能や使用感に関わり、消費者の購入意欲を左右する非常に大事なものです。本記事では、プロダクトデザインについて説明するとともにプロダクトデザイナーの仕事内容や役割などについて解説します。
製品にとって重要なプロダクトデザイン
そもそも「プロダクトデザイン」とは、どのようなデザインを指すのでしょうか。ここではプロダクトデザインとよく比べられる「インダストリアルデザイン」についても解説します。
プロダクトデザインとは
プロダクトデザインとは、その名のとおりプロダクト(生産品・製品)のデザイン(意匠)のことを指します。一般的に大量生産品のデザインに対して使われることが多い言葉ですが、芸術性の高い工芸品やオブジェのような少量生産品、一点もののデザインに対しても使われることがあります。
プロダクトデザインの対象となる製品は、自動車や家電製品といった先端技術を活用したものから、文房具や食器などの生活用品やインテリア雑貨まで、ありとあらゆるものです。そしてプロダクトデザインには「おしゃれ」や「美しい」といったデザイン性だけでなく、使いやすさや機能性、安全性も求められます。
プロダクトデザイン商品の一例を挙げると、粧美堂株式会社の洗顔ブラシ 「リッチホイップブラシ SHINKA」は、年代、性別問わず使えるミニマムで手に握りやすい形状、そして生活になじむカラーのプロダクトを実現し、2021年度のグッドデザイン賞を獲得しました。
また、大成建設株式会社・新潟精機株式会社の工具メジャー「スパイラルメジャー」は、従来の建設用メジャーが重く、扱いにくいことから軽量で扱いやすいメジャーを開発しました。おしゃれで利便性も高いため、建設業の人だけでなく、子どもや女性といった幅広いユーザーの獲得にもつながり、こちらも2020年度のグッドデザイン・ベスト100に選ばれました。
インダストリアルデザイン
インダストリアルデザインとは、工業的な部品や機器などのデザインのことで「工業デザイン」とも呼ばれます。そしてインダストリアルデザインは、大量生産を前提とし、形状や材質、色合いなどのバランスが決められます。プロダクトデザインの違いは、インダストリアルデザインが工業的なデザインのみを指すのに対し、プロダクトデザインは工業的なデザインを含む、広範囲の製品のデザインを指します。
プロダクトデザイナーという仕事の重要性
見た目と使いやすさの両方を兼ね備えたプロダクトデザインを生むのがプロダクトデザイナーです。しかし、プロダクトデザイナーはただ製品をデザインするだけが仕事ではありません。
まず、製品のコンセプトやターゲット層を決め、それに基づいて市場調査を行い、デザイン案を制作していきます。そして設計者や営業担当者らと密に連絡を取り合って進めていきます。したがってプロダクトデザイナーには、優れたデザインセンスだけでなく、幅広く何でもできるゼネラリストとしての能力が求められ、製品開発に関わる重要な役割を担っています。
ほかにもプロダクトデザイナーには、最新のトレンドや流行をキャッチする能力や、グラフィックデザインソフトに対するスキル、製造技術や人間工学など製品開発を行う上で不可欠な知識、製品化するまでに関わる人とのコミュニケーション能力などが求められます。
特に昨今は製品の差別化が難しく、製品の購入にあたってはデザインを重視する人たちも増えています。新たな市場の獲得を狙う企業も増加しているため、プロダクトデザイナーが活躍する場は、今後拡大していくことが予想されます。
顧客体験につながるプロダクトデザインの重要性
プロダクトデザインは、顧客体験(カスタマーエクスペリエンス・CX)にもつながります。その重要性は以下のとおりです。
プロダクトデザインと顧客体験の関係
競合する製品が多い状況で企業が生き残るには製品に何らかの付加価値を付けて顧客に訴求しなければなりません。だからこそ、優れた顧客体験を提供して「継続的に取り引きしたい」と顧客に思わせることが重要です。
顧客体験を向上させれば顧客満足度が上がってブランドイメージのアップにつながり、大きな宣伝効果になります。また、顧客体験の向上は、企業にとって長期的に繰り返し購入し、第三者に宣伝活動を行ってくれるロイヤルカスタマー・リピーターの獲得も期待できます。
質の高い顧客体験に重要なポイントとは
質の高い顧客体験に重要なのは、顧客の声に耳を傾けることです。製品に対してユーザーが何を必要とし、何を望んでいるのかをしっかりと調査・共感して製品に落とし込むことが大切です。
また、顧客のロイヤルティを高めるような質の高い洗練されたデザインと究極の使いやすさが求められます。
プロダクトデザインの製品ができあがる流れ
実際にプロダクトデザインの製品ができあがるまでには以下のような工程が必要です。
①コンセプトの設定
まずは製品のターゲットユーザーを定めて、そのユーザーがどのような状況で、どんな使い方をするのかといった製品のコンセプトを決めていきます。これらはクライアント側が設定してくることもありますが、プロダクトデザイナー自らが提案をし、クライアントとコンセプトを決めていくこともあります。
②市場調査
同じカテゴリーに分類される商品のトレンドを調査し、どのような製品が、どんな人たちに受け入れられているのかを調査します。現状を知ることが企画を成功に導くポイントになります。さらにターゲットユーザーの好みや要望をリサーチして、よりコンセプトやデザインなどを固めていきます。
③ラフスケッチの制作
市場調査の結果を踏まえて、プロダクトデザイナーが製品のたたき台となるラフスケッチを作成します。ラフスケッチを基に技術者、設計者、営業担当者などの関係者でさらにアイディアを出し合い、修正を重ねます。このとき、機能や素材なども決めていきます。
④模型作成と検証調査
修正したラフスケッチを基に3DCGの制作や模型を制作します。特に精巧な模型を作成することで製品の見た目や使用感などを実際に確かめる検証調査ができます。そのため、模型制作にはデザイナーとしての技術スキルやセンスが問われます。模型ができたら形状、素材、質感などを精査し、問題があればさらに変更・修正を行います。場合によってはこの段階で大きな変更・修正が入ることもあります。
⑤デザイン画の清書
関係者からの多くの意見や要望を踏まえてラフスケッチ、模型作成、検証調査を繰り返して実際の製品に近いものまで作り上げていきます。このとき、製品化してもトラブルはないか、機能は実現しているかなども検証して完成度を高めていきます。特に工業部品などはミスが許されないため、何度も修正を行い、デザインを完成させていきます。
最終的なデザインが決まったらデザイン画の清書を行います。
⑥設計図の作成
デザインが決定したら設計担当者が設計図を作成します。その設計図から最終的な試作品を作成し、デザインや機能、素材などに問題がないことを確認します。
⑦生産
安定して大量に生産するために、多くの場合、金型や専用の機械が作られます。そして、商品として生産され、品質保証のために検査し、問題なければ出荷、配送、販売されてようやく顧客に商品が届きます。
まとめ
新商品を開発しても既存の類似商品との差別化が難しい現代において、顧客体験につながるような商品を生み出すプロダクトデザイナーはとても重要な仕事です。そして、顧客の要望に寄り添って誕生したプロダクトデザイン製品は、ロイヤルカスタマー・リピーターの獲得につながり、企業成長の切り札となります。