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公共部門向け生成系AIユースケース集
教育・子育て

AIによる教育とは? 活用のメリット・デメリットから事例まで解説

近年目覚ましい技術の進歩を背景に、AIはさまざまな産業の現場において活用が模索されています。教育業界でも、これまでは実現できなかった高度な教育の実現や教師の労働環境改善などに向けて、AIの導入が進んでいるのが現状です。

この記事では、AI活用のメリット・デメリットや実際の導入成功事例などについて分かりやすく解説します。

AIによる教育とは? 活用のメリット・デメリットから事例まで解説

AIによる教育とは?

AI教育とは、AI(Artificial Intelⅼigence:人工知能)を活かした教育のことです。現在では生徒のみならず教師にも有益な教育システムとして注目を集めています。AIには従来のプログラムとは違い「認識・分類したデータをもとにあたかも人が行うかのような知的情報処理ができる」という特徴があります。私たちの日常生活に浸透しつつある、お掃除ロボットや自動運転可能な車などもAIの一種です。

また、AIの精度は日々進化しています。現在では、膨大なデータを蓄積・処理することにより、AI自体がそのデータの中の特定のデータの特徴を発見する「ディープラーニング」も可能になっています。こうした進歩を受け、今後教育や医療、介護、農業などさまざまな産業の現場での活用が期待されています。

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教育分野におけるAIの現状

近年AI教育の重要性は広く認識されてきており、すでに政府主体の取り組みも始まっています。ここでは、現在日本政府が行っているAI教育への取り組みを紹介します。

GIGAスクール構想

GIGAスクール構想とは、文部科学省が2019年に打ち出した構想のことで、「AIの活用による子どもたち一人ひとりに合った質の高い教育の実現」の推進を主な目的としています。

当初はその準備段階として、2023年度までに、義務教育を受ける児童生徒に1人1台の端末配布や、高速LANの設置などによる快適に利用可能な環境の整備が予定されていました。しかし、新型コロナウイルス流行の影響でオンライン学習の環境整備が急速に進んだことから、2021年には本格的な運用がスタートしています。

参照元:文部化科学省|GIGAスクール構想の実現について

生成AIの暫定的ガイドライン

生成AIは、データの認識・分類の枠を超え、蓄積したデータをもとに自ら成果物を生み出す能力を有するAIです。最近ではその代表格である「ChatGPT」がたびたびニュースなどでも取り上げられていることから、すでにその存在を耳にしたことがある方も多いでしょう。

生成AIは、使い方次第では学習の妨げになったり、個人情報の流出や著作権などの権利侵害につながったりするリスクをはらんでいます。その一方で、将来的に活用の範囲拡大が予想されることから、適切に使いこなす力の習得が求められているのも事実です。また、今後は教師が行う授業準備などへの利用も想定されています。

こうした流れを受け、文部科学省はGIGAスクール構想の一環として生成AIの取り扱いを検討し、2023年7月には教育現場での使用について、ガイドラインを公表しました。ガイドラインの中には、使用に適した場面と不適切場面が、それぞれ具体例を用いて述べられています。

参照元:初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン

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教育分野でAIができること

AIの能力は、教育分野にもさまざまな効果を与えることが期待されています。ここでは、「教育分野においてAIを用いると、どのようなことができるのか」について具体的に解説します。

教師の授業アシスタント

AIを教育に活かすことで、これまで教師の目が生き届かなかった生徒へのフォローが可能になります。

従来の授業では、1人の教師が大人数の生徒を教えるスタイルが一般的でした。しかし、これではすべての生徒の理解度を正確に把握することはできません。ある生徒に気を取られているうちに、授業の理解が追いついていない他の生徒を見逃すおそれもあります。

AIを活用すると、生徒一人ひとりの成績や授業中の画像データなどをリアルタイムに観察・分析し、集中できていない生徒や授業内容を理解していない生徒を瞬時に抽出できます。生徒一人ひとりのフォローや授業内容の改善に役立ちます。

生徒の学習支援

すべての生徒が一律の教材や宿題を与えられることが一般的ですが、生徒の習熟度にはそれぞれ差があります。そのため一人ひとり適切にフォローしきれていないことが課題のひとつとされてきました。

しかしAI教育では大人数の生徒の学習状況をリアルタイムに分析でき、生徒に応じた難易度の問題や、過去に間違えた箇所の類似問題などの出題が可能です。苦手分野の補填や得意分野の伸長を効率的に行うことで、効率的な学びを支援できるので、これまで以上の理解度の向上が期待されます。

テストの自動採点

AIは、精度の高いOCRを使った自動採点も実現可能です。

OCRとは、Optical Character Recognition(またはReader)の略で、文字を画像データからテキストデータに変換する光学文字認識機能のことをいいます。OCRは、これまでも存在していた技術ですが、文字の種類が多く、似たような形をしたものが多い日本語はシステムの誤認を招きやすいことから、教育現場への導入は難しいと考えられていました。しかし、精度の向上で画像認識力が高まったことから、現在では教育への活用が期待されるようになっています。

AIを教育に活用することのメリット

AIを導入することで、これまででは実現できなかった教育環境の実現が可能になります。ここでは、AIによって教育現場にもたらされるメリットについて紹介します。

教師の負担が減る

AIを教育現場に活用することにより、大きく効果があると見込まれるのは、教師の負担の軽減です。

近年問題視されている教員不足や長時間労働の解消も期待されています。教師の業務内容は、授業だけでなく点呼や試験監督、テストの採点などの雑務も大きなウエイトを占めており、長時間労働や仕事の持ち帰りなどの温床になっているともいわれています。また、こうした状況が教師という職業自体のイメージを低下させているため、優秀な人材確保も教育業界の課題のひとつとされてきました。

2020年には学習指導要綱改定が行われ、これまでの「知識・技能」に加え、「思考力・判断力」や「学びに向かう力・学びを活かす力」なども育成の対象になることが明言されています。一人ひとりの指導がさらに求められることから、教師への負担はさらに大きいものとなりました。

AIを活用すると、これまで教師が行っていた雑務と呼ばれる業務を自動化できます。業務の効率化が進むほか、教師はAIでは補えない部分、例えば生徒の指導に集中できます。

生徒の学習理解度が上がる

AIを活用することで、生徒全体の学習理解度の底上げが期待できます。

これまでの画一的な教育では、生徒一人ひとりの理解度を把握・フォローするのは困難でした。そのため「少しのつまずきを放置したために、気が付いたら授業についていけなくなっていた」「そもそも何が分からないのかが分からない」という状況が発生することもありました。さらに地方では、都会に比べて学校自体が少なく、学びたい内容の選択肢が狭まることや、専門的なスキルを有している教師が不足していることから、教育環境の格差も問題視されています。

しかしAIを使うと、できていない単元やテストの所要時間、これまでの成績などを分析できるので、適切な個別サポートが叶います。またインターネットを経由することで、生徒は居住地域に関わらず高度な教育環境を選択できるようになります。

エビデンスに基づく教育が展開できる

AIが分析したデータを活用することで、経験やノウハウの少ない教師でも適切な授業展開が行いやすくなります。

これまでの教育現場では、教師の力量に授業の質が大きく左右される場面が少なくありませんでした。例えば、その場の反応を見ながら柔軟に授業内容を展開できる先生は、教科書通りに進める先生に比べ、同じ授業内容でも生徒の集中力を高め、理解度を向上させる場合があります。しかしこうした技術やノウハウは属人的な感覚によるものなので、その教師が退職後に他の教師が同様に授業を提供することは困難とされていました。

AIは授業内容をデータとして分析できます。「居眠りしていないか」「困った顔をしていないか」など授業態度や表情から、リアルタイムに生徒の集中力の度合いや理解度を把握できるため、適切なタイミングでアイスブレイクやフォローを入れやすくなり、授業の質を向上させることができるでしょう。

また、蓄積した授業データを教師の評価に活用し、課題発見や成長度合いを測るのにも役立ちます。

AIを教育に活用することのデメリット・導入の課題

多くのメリットを得られるAI教育ですが、導入を検討する際にはデメリットや課題の存在についても知っておく必要があります。

導入環境の構築に時間やコストがかかる

AI教育を導入するにあたっては、AI自体を各教育現場にあわせて最適化する手間やコストがかかります。

例えば、生徒一人ひとりに関する教師データ(過去の成績推移など)を事前にAIに学習させておかなければいけません。もし十分なデータの蓄積を行わずに利用を開始してしまうと、分析の精度が上がらず思ったような効果が得られなかったり、トラブルに発展したりするおそれがあります。

また、導入したAI教育を運用していくためには、インフラやハード面での環境整備も不可欠です。高速LANを設置するなど高速通信可能な設備投資のほか、各家庭においても学校と同様に使用できる環境作りのために、保護者への説明を行うことも必要です。

考える機会が減るおそれがある

AIは生徒や教師の主体的な知的活動を促すことは不得意です。

教育現場では「試行錯誤しながら分からないことを解決に導く力」や「自ら学ぼうと挑戦する力」などの育成も求められています。しかし、AIは蓄積されたデータに基づき最適な答えを提供することができる半面、こうした力の習得を阻害してしまう可能性があります。

AI教育を導入する際には、導入分野や活用方法などについて慎重に選定しましょう。過度にAIに頼るのではなく、教師・生徒ともに考える力や学ぶ意欲を育てていく工夫が必要です。

教育現場でのAI活用事例

では、実際の教育現場ではどのようにAIが活用されているのでしょうか。ここでは、教育現場におけるAI活用事例を紹介します。

AIドリル

AIドリルとは、AIを使って生徒の習熟度を分析し、それに応じた出題や問題の反復を行うドリルのことです。教科書と同様、さまざまなメーカーの商品の中から自治体や学校ごとに選択でき、現在では多くの小中学校で導入が進んでいます。

東京都足立区では、2022年4月より区内全公立学校の小学3年生〜中学生を対象に「Qubena(キュビナ)」の運用を開始しています。楽しんで活用する児童生徒も多く、2020年の試験運用開始前と比べると児童生徒の理解力が向上しているほか、通常では14週間かけて行う授業をわずか2週間で終わらせるという実績も残しています。

また、滋賀県守山市は2020年から「すららドリル」の実証実験を開始しました。実験の結果、学力や意欲の向上が見られたことから、2021年からは本格活用を行っています。同じく「すららドリル」は、石川県羽咋市でも2023年5月より市内の小学5年生〜中学3年生までを対象に運用開始されました。こちらも主体的な学びに役立つとして、7月からは全児童生徒約1,200人を対象に順次導入されています。

参照元:足立区役所「AI型ドリル教材を区立全小・中学校へ導入しています」

英語4技能対策授業実現AIツール

英語4技能対策授業実現AIツールは、英語4技能と呼ばれる「聞く」「話す」「読む」「書く」の能力をAIを活用して習得するためのプログラムです。生徒の英語発音診断、英作文文法判定、テキスト読み上げなどをおこなえます。

高度な英語教育の実現を目指し、現在では一部の私立高校や公立高校で運用が開始されています。大阪府立箕面高校では「トレパ」を導入し、英語発話診断や英作文文法判定などに活用しています。

参照元:トレパ

オンライン試験監督システム

試験監督をAIに代行させる「オンライン試験監督システム」を搭載したツールも、数多く登場しています。例えば、オンライン試験用のプラットフォームに受験者の不正感知を行えるAIを実装させることで、オンラインシステムにおけるAI試験官として活用できるツールや、受験者のPC操作履歴や目の動きから不正を検知できるツールなどは、現在すでにいくつかの学校などでも導入されています。

協働学習の過程の可視化

協働学習とは、他の児童生徒と話し合うことで習熟度を高めていく学習のことを指します。京都市では2018年より協働学習の推進を目指していますが、学習を適切に進めるためには話し合いのプロセスを把握し、状況に応じたフォローを行う必要がありました。

そこで、教育現場にAIを導入して発話状況の可視化に取り組んでいます。収集したデータをもとに発話の少ない人に発言機会を与えたり、発言回数が多すぎる人には発話を少し抑えるように促したりと、効果的なフォローに役立てられています。

画像認識による自動出席確認

画像による顔認証システムを利用した自動出席確認ツールも、大学や学習塾を中心に多くの学校で採用されています。

これまでの紙や声による出欠確認には、教師の負担増や他の生徒によるなりすましを防ぎきれないという課題がありました。しかしAIを活用したリアルタイムの顔認証は、こうした問題の解決に役立ちます。また、定期的なモニタリングによる、途中退出の有無やオンライン授業の受講状況のチェックにも使われています。

AIチャットボットによるお問い合わせサービス

チャットボットとはチャットとロボットを組み合わせた造語で、LINEやメッセンジャーのような対話形式のコミュニケーションを自動で行えるシステムのことです。チャットボットにAIを搭載すると、より複雑な質問にもデータをもとに適切に対応できます。このAIチャットボットを利用し、問い合わせ電話にスピーディーな対応を実現している学校もあります。

これまでのようにすべての問い合わせに人が対応していると、タイミングによっては電話に出られなかったり、適切な情報提供ができなかったりすることがあります。しかし、AIチャットボットを導入することで、多くの問い合わせがあっても電話先で人を待たせることなく対応できるようになっています。

また、コロナ禍でオープンスクールなどのイベントが制限されていた際には、保護者だけでなく受験希望者からの問い合わせにも役立ちました。

まとめ

AI教育は現在、さまざまな学校で導入が進んでいます。

AIの活用には課題が残っているものの、教師の負担軽減や生徒一人ひとりに応じた教育の最適化、教育の地域格差是正など導入するメリットも多くあります。今後、AIを活用した教育環境の改善を検討しているのであれば、まずはAIの特性を理解し、適切な導入方法を探りましょう。

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