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業界別ビッグデータの活用事例集! 活用のメリットや成功のポイントも

小売業・製造業といったビジネスではもちろん、教育や医療、観光などの分野でもいまや欠かせないのがビッグデータです。ビッグデータを適切に利活用するためには、まずビッグデータについて正しく理解する必要があります。本記事では、ビッグデータをよく知り、利活用するためのポイントを活用事例を交えてわかりやすく解説します。

業界別ビッグデータの活用事例集! 活用のメリットや成功のポイントも

ビッグデータの基礎

まず、「ビッグデータとは何か」といった基礎を理解するために必要な2つの項目、

  • 総務省の定義による3種類のビッグデータ
  • ビッグデータの特性を表す5つのキーワード

について解説します。

3種類のビッグデータ

実は、ビッグデータには明確な定義はありません。Googleなどで「ビッグデータ 定義」で検索してみれば、「明確には定義されていない」といった検索結果が並ぶはずです。明確な定義はないものの、一般的には「従来の構造化されたデータだけでなく、人間がすべてを把握することは難しい膨大なデータ群」のことをビッグデータと呼んでいます。具体的にはたとえば、

  • SNSに書き込まれたコメント
  • インターネット上の動画・画像・音声
  • ECサイトでの顧客の購買履歴
  • GPSによって検知された位置情報
  • サーバーに蓄積された各種ログデータ
  • POSデータや取引明細

といったものはすべてビッグデータです。スマートフォンの普及やネットワークの高品質化、IoT関連機器の進歩などによって、従来の技術では不可能だったこれらのデータ群が生成され、流通・蓄積・分析・活用されるようになってきています。

近年では行政をはじめ、医療、教育、製造、輸送、エネルギー、情報通信、農業など、さまざまな分野でビッグデータの利活用が進められています。身近な例を挙げると、AmazonやGoogleはユーザーの検索履歴や購買履歴などを蓄積・分析し、興味のある広告やコンテンツを個別のユーザー単位で配信しています。

冒頭で「明確には定義されていない」と述べましたが、総務省では「平成29年版 情報通信白書」の「ビッグデータの定義及び範囲」の中でビッグデータを以下の4つに分類しています。

  • 政府や地方公共団体が提供する「オープンデータ」
  • 企業の暗黙知(ノウハウ)がデジタル化・構造化されたデータ(知のデジタル化)
  • 企業が保有する、M2M(Machine to Machine)で出力されるストリーミングデータ(M2Mデータ)
  • 個人情報に加え、個人情報との境界が曖昧な情報をも含む「パーソナルデータ」

上記の「知のデジタル化」と「M2Mデータ」とをあわせて「産業データ」と呼ぶ、としているため、総務省の分類ではビッグデータは「オープンデータ」「産業データ」「パーソナルデータ」の3種類となります。

オープンデータ

人口統計や人の流れ、防災・減災、政府の企画・立案の根拠となった情報など、国や地方公共団体が保有し、公開しているデータです。3つ(4つ)のビッグデータの中で先行している分野であると総務省では認識しています。原則としてCSVやXMLなどの機械判読が可能な形式で公開され、営利目的を含めた二次利用が可能です。「官民データ活用推進基本法」にしたがい、各府省庁が保有するデータはすべて公開するとされていますが、国の安全保障などの公開に適さない情報はその限りではありません。

関連記事:オープンデータの活用事例10選! 言葉の意味や活用の注意点を解説

産業データ

企業が保有するパーソナルデータ以外のデータやIoT機器から収集されるデータなどを指します。たとえば、自動車に搭載されたセンサーが収集した車体の揺れや車速、急ブレーキの回数といったデータが該当します。上述した通り、企業が独自に蓄積したノウハウがデジタル化されたもの(知のデジタル化)も産業データです。これらのデータを企業間で流通・連携させることにより、我が国産業の競争力が高まると期待されています。

パーソナルデータ

個人情報はもちろん、その周辺の広範囲なデータを指します。氏名や住所などに加え、その人の属性、移動履歴、購買履歴、行動履歴などが該当します。スマートウォッチなどで測定した血圧や心拍数といった情報もここに分類されます。改正個人情報保護法によって個人を特定できないように匿名加工された情報もパーソナルデータです。

参照元:総務省「平成29年版 情報通信白書」ビッグデータの定義及び範囲

ビッグデータを構成する5つの「V」

ビッグデータのもつ(あるいは求められる)特性を説明するためにしばしば用いられるキーワードがあります。

  • Volume(データ量)
  • Variety(多様性)
  • Velocity(速さ)
  • Veracity(真実性)
  • Value(価値)

であり、これらは「5つの『V』」と呼ばれています。

従来、ビッグデータの「V」は「Volume」「Variety」「Velocity」の3つのキーワードで構成されるという考え方が主流でしたが、近年では、さらに「Veracity」と「Value」を加えた「5つの『V』」とするのが一般的になっています。

1. Volume(データ量)

ビッグデータは、スマートフォンやIoT機器のセンサー、交通系ICカードなど、さまざまなデバイス・経路から日々生成され、収集されています。ビッグデータの「膨大さ」を表すキーワードがVolumeです。膨大で多様なデータを適切に処理して分析するためには、大容量のストレージや高性能のデータ分析アプリケーションなどが必要です。

2. Variety(多様性)

ビッグデータには企業の顧客データや売上データのように構造化されたデータも含まれますが、多くを占めているのはテキストや画像、音声、動画などの非構造化データ、さらにはXML、JSON、HTMLなどの半構造化データです。こうしたビッグデータのあり方の「多様さ」を表しているのがVarietyです。これらのデータを直接、集計したり、解析したりすることは困難なため、分析できるように事前にフォーマットを変換・加工する必要があります。

3. Velocity(速さ)

ビッグデータは、生成されてから受信・分析されるまでの速度や更新頻度が高くなければ、価値は半減どころか、ゼロにすらなりかねません。それを示すキーワードがVelocityです。ビッグデータでは常に膨大なデータが生成・更新され続け、多くの場合、リアルタイムで処理されています。たとえば自動車の自動運転のように、データを受け取った瞬間に解析し、解析結果にもとづいたアクションを起こせるのは、ビッグデータがVelocityという特性をもつからにほかありません。

4. Veracity(真実性)

ビッグデータに求められる、高い信頼性と品質を表すキーワードがVeracityです。データは異常や偏り、ノイズがなく、正確で真実性が高くなければなりません。信頼性と品質が担保されていないデータは、分析結果を歪めてしまう可能性があります。さらにノイズの多い、品質が悪いデータを分析するには、ノイズを排除するためのコストもかかります。

5. Value(価値)

顧客のデータベース、経理データ、GPSデータ、気象データ、音声データ、SNSの投稿、アクセスログなど、ビッグデータの種類はさまざまです。これらの膨大なデータを包括的に分析・利活用することで、新たなアイデアが生まれ、価値が創造される可能性があります。ビッグデータの解析・活用によって創造される価値を表すキーワードがValueです。

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【業界・分野別】ビッグデータの活用事例

ビッグデータの活用事例を小売業、製造業、まちづくり事業、教育分野、畜産業、医療分野、観光分野の業界別・分野別に紹介します。

【小売業】コンビニなどでのニーズに合わせたサービス提供

ビッグデータを消費の活性化や物流の効率化につなげるために、経済産業省では2015年10月に「流通・物流分野における情報の利活用等に関する研究会」を設置し、5回の議論を経て、2016年5月に調査報告書がまとめられました。同報告書では「データ利活用がもたらす卸・小売業の未来」と題して、商業(卸・小売業)がほかの産業に比べて圧倒的に大量のデータを保有しており、卸・小売業はこのビッグデータを(1)国内消費の縮小、(2)外国人消費者の不満、(3)経済規模と生産性の低さといった問題の解消・改善に利活用すべきだと提言しています。利活用の具体的なアクションとしては、たとえばユーザーの消費活動に関する膨大なデータから需要の予測をしたり、各ユーザーのパーソナルデータを分析したうえで、それぞれの嗜好にマッチした広告やクーポンを配信したりといったことが挙げられます。

参照元:経済産業省「データ利活用がもたらす卸小売業の未来_20160526」

2021年度の国内小売業売上高最高であるセブン&アイ・ホールディングスでは、グループを横断した購買データやアプリ行動データを、AWS(Amazon Web Services:アマゾン ウェブ サービス)を導入して分析することで、ユーザー動向の把握や生産・在庫管理の最適化、グループ間の相互送客を実現しています。

参照元:AWS「AWS 導入事例:株式会社セブン&アイ・ホールディングス」

【製造業】デジタル図面データの活用による作業の機械化

制御盤製造を主力事業とするA社では、

  • 配線作業が製造担当者の知見に依存してしまうこと
  • 工程内での分業ができておらず、作業進捗・工程管理が製造担当者まかせになっていること

が大きな課題でした。そこで同社では、工程ごとの作業を可視化・標準化できるツールを開発・導入し、同社独自の産業データである回線図面と配線図面のデータとを融合してデジタル図面データを作成し、一部の作業を機械化しました。この施策によってベテラン製造担当者がより付加価値の高い業務に注力できるようになり、生産性の向上に成功しています。さらに作業が標準化されたことにより、新規海外拠点への進出と市場参入も可能になりました。

参照元:経済産業省「製造業DX取組事例集」

【まちづくり事業】ICTやビッグデータを活用したスマートインフラの実現

埼玉県さいたま市では「スマートシティさいたまモデル」と題して、AIやIoT、ビッグデータを活用した、より暮らしやすい街づくりに取り組んでいます。たとえば、県内最大のターミナル駅・大宮駅周辺の歩行者の数や回遊行動、滞在時間などのデータをスマートフォンのGPSを活用して取得・分析し、駅前広場の整備パターンの評価・検討に役立てており、ビッグデータを戦略的に用いています。そのほかにも、人流データを活かして、電動アシスト付き自転車やスクーター、超小型EVなどシェア型モビリティの最適な配置場所の分析なども進めています。

参照元:国土交通省「データを活用したまちづくりの事例」

【教育分野】EdTechの普及によるイノベーション

教育分野でもビッグデータの活用が期待されています。すでに中国では、日本に先駆けてAIとビッグデータを用いた「EdTech(エドテック)」が普及しつつあります。EdTechはEducation(教育)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語で、個々の生徒・学生に最適化された学びを提供することを大きな目的としています。オンライン授業や、AIが自動回答するシステム、タブレット端末などから各生徒・学生の学習履歴や行動履歴などを長期的・連続的に収集し、それぞれの嗜好や資質をAIが分析するシステムなども登場してきています。教職員のスキルの差を補い、各生徒・学生に対する学習のフィードバックも可視化されるため、能動的な学びにつながるのではと期待されています。

関連記事:教育ビッグデータとは?背景や目的、活用事例を解説」
関連記事:エドテック(EdTech)とは? 注目される背景や実現できることを解説

【畜産業】AI×ビッグデータ活用によるブランド牛の品質向上

福島県では、原発事故による風評被害を受け、全国平均よりも1割程度安く取引せざるを得なくなっている県産和牛「福島牛」のブランド力の回復・強化に取り組んでいます。さまざまな施策が実施されていますが、なかでも生育途中の牛の肉質をAIが評価するシステムは、優良な牛肉の安定的な出荷に大きく寄与しています。生育途中の牛の超音波画像と、と畜後の枝肉の画像データとをAIが継続的に学習・分析するこのシステムは、帯広畜産大学などと連携し、全国に先駆けて開発されました。従来に比べて生育具合を把握しやすくなり、飼育効率や畜舎回転率の向上につながっています。

参照元:総務省 「地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】」

【医療分野】「PHRヘルス」による健康増進や生活改善サポート

医療の効率化・高質化を図るために、医療分野にもビッグデータが活用されています。代表的な利活用例のひとつが、個人の健康・医療・介護データを一元化する「PHR(Personal Health Record:パーソナルヘルスレコード)」です。PHRは生涯型電子カルテとも呼ばれ、血圧や睡眠などのライフログをはじめ、健康診断の結果、予防接種の履歴、医療機関の受診履歴、投薬履歴、アレルギー情報などを一元管理できるシステムです。PHRのデータを利活用することで、

  • 各患者に対する、より適した治療の選択
  • 重篤な疾患の早期発見
  • 転院時・災害時のスムーズな診療や薬の処方

につなげられると期待されています。

関連記事:医療ビッグデータとは? 活用事例や将来の展望を解説!

【観光分野】アプリのログデータ活用による観光需要の創出

滋賀県には、国指定のナショナルサイクルルート「ビワイチ(琵琶湖一周のルート)」があり、県内はもちろん、県外からも多数のサイクリストが訪れています。滋賀県では、琵琶湖周辺だけでなく、県内の随所にある観光スポットへも足を延ばしてもらうために、サイクリング専用アプリ「BIWAICHI Cycling Navi-Shiga Trip-」を開発・公開しています。本アプリにはナビゲーション機能などが搭載されているのはもちろん、ビッグデータを収集・活用した「走行ログ」機能があり、走行したルート、消費カロリー、CO2削減量などが記録されます。走行ルートと写真とを合成した画像をSNSにシェアすることも可能です。県ではユーザーの走行ログを分析することにより、観光客の新たな需要を掘り起こしたいと考えています。

参照元:総務省「地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】」

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ビッグデータの活用によって得られるメリット

ビッグデータの利活用には、

  • 高精度の現状把握・未来予測ができる
  • マーケティングの効率化を図れる
  • 新たなビジネスチャンスを発見できる

といったメリットが期待できます。

高精度の現状把握・未来予測ができる

ビッグデータは現状把握および未来予測の一助となります。自動車やスマートフォンの位置情報を収集・分析して、渋滞などの交通状況をリアルタイムで把握できるシステムがその一例です。自動車の走行ルートや急ブレーキ、車速、車体の揺れなどのデータを収集・分析することにより、路面の傷みの早期発見・対策や、都市計画、渋滞解消などを実現したケースもあります。速度超過や急ブレーキが多発している箇所を分析して路面標示を設置すれば、潜在的な事故発生リスクを低減させることが可能です。さらに、ブレーキとアクセルのペダルの踏み間違いを検知し、誤操作を防止するシステムが数多くの車種に搭載されていることを知っている人は少なくないはずです。

製造工場の現場でも、蓄積されたデータをもとに、AIが作業担当者の逸脱動作などを検出する仕組みが登場しています。

さらに、将来的に発生するかもしれない大規模災害にもビッグデータの利活用が可能です。たとえば避難者の位置情報データをリアルタイムで収集・可視化することで、全体的な避難・被害状況、避難所への密集度、帰宅困難者の量などを把握し、医療や支援物資の適切な配分を行えるシステムが開発されています。2020年に発生した熊本県の大洪水の際も、人流データが災害対応の初期段階に活用されました。

ビジネスにおいては、ユーザーの購買履歴に加えて、販売箇所や販売時刻、SNSの投稿などのデータを組み合わせることで、ほぼリアルタイムで需要把握や予測を行い、客単価の向上や利益率の極大化などを図っています。

マーケティングの効率化を図れる

マーケットや競合他社、ユーザーの動向や、ユーザーのロイヤリティ(企業や商品・サービスに対する信頼や愛着)などを、高精度かつリアルタイムで把握できるようになることも、ビッグデータの利活用で得られる大きなメリットです。

ユーザーの名前や属性、連絡先、さらには嗜好や購入額、購入履歴、購入頻度、オンライン上でのやり取りなどのデータなどを複合的に分析することで、商品・サービスに対するユーザーの反応や、ユーザーが購入に至った背景なども考察できるようになります。たとえば近年ではSDGsや世界情勢に対する関心が高まっており、これらの問題に対する企業の姿勢や社会的責任に消費者は敏感になっています。こうした状況の変化が自社にどのように影響してくるのかを、データを用いて定量的に観測し、分析することも可能です。

ビッグデータを利活用すれば、ユーザーにアプローチすべきタイミングや打ち出すべき施策の精度も上がり、マーケティングをより有効に展開できるようになります。ビッグデータが予測した需要にもとづいて価格調整や宣伝の予算配分を行うことも、従来に比べれば、現在は難しいものではなくなりました。

ビッグデータが利活用されている組織では、データドリブン(Data Driven:データにもとづいた判断やアクション)の考え方は自然と各従業員に根付いていきます。個人のスキルやノウハウ、直感などに頼ると業務の属人化を招きますが、誰もが収集されたデータを分析して判断することで、属人化からの脱却と業務の平準化・効率化を実現可能です。さらに、経営判断も迅速になります。

新たなビジネスチャンスを発見できる

ビッグデータを有効に利活用できれば、たとえば、

  • 得られたビッグデータを新しい企画の検討に生かす
  • トレンドと顧客の消費行動を分析して、新しい製品やサービスを考案する

といった気運が社内に醸成され、さまざまなビジネスチャンスが生まれる可能性があります。

動画配信サービスのNetflixの成功がよい例です。同社は、ビッグデータにもとづいたレコメンドシステムでユーザーの嗜好に合ったコンテンツを提案して売上を伸ばしています。さらにユーザーの視聴動向をトラッキング・分析し、シナリオから俳優、監督までユーザーの嗜好が反映されたオリジナルコンテンツを制作して、さらなる大成功を収めました。

ビッグデータの活用を成功させるためのポイント

ビッグデータから得られるメリットを最大限にするためには、

  • データの利活用目的を明確にする
  • 継続的なデータ収集と効果検証を行う
  • 利活用を見据えてデータを保存・整理する

といったことが必要です。

ビッグデータの利活用目的を明確にする

ただやみくもにデータを生成・収集しても得られるものはありません。ビッグデータの利活用を成功に結びつけるためには、利活用の目的を明確にすることが大切です。つまり、以下の2点を誰もが理解できる形で明示する必要があります。

  • 何を知りたいためにビッグデータを収集するのか
  • データ分析の結果をどのように活かしたいのか

「結論ありき」でデータを集めることは偏った結論につながる危険性がありますが、仮説を立てたうえでデータ収集することは重要です。さらに、手もとにある一部のデータを分析するのではなく、目的に合致した幅広いデータを収集したうえで分析することも忘れてはいけません。あらためて言うまでもありませんが、ビッグデータの利活用そのものが目的となってしまうことはまったくのナンセンスです。

継続的なデータ収集と効果検証を行う

事前に明確にされた目的に沿ってデータ収集・分析を行って、一定の結論に至り、それに則って施策を実施した場合には、必ず施策実施後の効果検証を行う必要があります。施策は想定通り(成功)だったのか、そうではなかった(失敗)のか、失敗した場合には、収集したデータに問題があったのか、分析方法が間違っていたのか、施策が現状に適していなかったのかなど、失敗の要因を特定して、施策を成功させるための方法を考えなければなりません。成功した場合も同様です。ビッグデータの利活用をより効率的にするためには、PDCAを回し続けることが大切です。

さらに、消費者の嗜好は社会情勢に大きく左右される一面があることからも、長期的・継続的なデータ収集・活用は重要です。

利活用を見据えたデータ保存・整理をする

ビッグデータに含まれるのは、Excelなどで利用できる表形式データや、表形式に変換可能な構造化データだけではありません。ある程度の規則性があるものの、表形式への変換可能性が不明な半構造化データや、表形式に変換できない非構造化データも多く含まれています。非構造化データに該当するのは音声、画像、動画、テキスト、PDFなどです。

非構造化データは容量が大きく、さらに秒単位で日々膨大な量が蓄積され続けるため、一元管理が難しいという側面があります。収集したデータの検索・更新性を維持しながら保存・整理するには、従来のものより大規模なストレージを確保し、分散型・統合型・データレイク型のデータ基盤を適切に使い分けなければいけません。ビッグデータの紛失・破損などが起きた場合の備えをあらかじめ考えておいたり、新しいセキュリティプロトコルを設定したりする必要もあります。

さらに、非構造化データは分析する前に整理・変換を行い、形式やフォーマットを標準化しておくことも重要です。適切にクレンジング(前処理)することで、機械学習などを用いた分析なども行えるようになります。

多種多様で膨大なデータを適切に利活用できれば、イノベーションやリノベーションが生まれる可能性がありますが、データの保管や前処理などには大変な手間がかかる場合があります。自社のみで管理・運用するのには限界があるため、専用ツールの導入などを検討することは有効です。

まとめ

ビッグデータには従来の構造化データに加え、さまざまなデバイスから生成された音声・画像・動画などの規則性がない非構造化データや、XMLなどの一定の規則性はあるものの、表形式に変換できるか不明な半構造化データも多く含まれています。総務省では、ビッグデータを「オープンデータ」「産業データ」「パーソナルデータ」の3つに分類しており、なかでも産業データは企業間での連携が進むことで、産業の競争力を向上させるものと期待されています。

リアルタイムで収集されたビッグデータの利活用は、ビジネスにおいてはマーケティング、セールス、顧客サービス、広報といった各部門単位にも企業全体にもさまざまなメリットをもたらします。データにもとづいた判断とアクションとが組織に根付くことで、業務の俗人化の防止や経営判断の迅速化などにもつながります。

ただし、非構造化データが大部分を占めるビッグデータは、保存・蓄積するためのデータ基盤を準備する必要があります。その際は、導入するシステムやツールの吟味が欠かせません。自社に適したシステムやツールを用いれば、多種多様なビッグデータの生成から分析・利活用までを、より高精度かつ容易に行えるようになります。

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