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医療・介護

介護業界でのAI活用|メリット・デメリット・導入での課題・事例を紹介

ビジネス戦略としてAI利用を検討している企業は少なくありません。

介護業界でも、現状の人手不足などの課題を解決する方法のひとつとして、AIツールの導入が検討されています。本記事では、介護業界におけるDXの必要性、とくにAIの活用方法やメリット・デメリットなどを解説します。

介護業界でのAI活用|メリット・デメリット・導入での課題・事例を紹介

介護業界でAI活用が求められる背景

介護業界でDX推進、なかでもAIの導入が求められる主な背景には、職員の人手不足や高齢化があります。これらの課題は、今後ますます深刻化すると見られています。

厚生労働省の調べでは、2019年度に必要とされていた介護職員数は、約211万人でした。しかし、2040年度に必要とされる介護職員数は約280万人とされ、約69万人必要数が増えると試算されています。
根拠として、高齢者人数の増加が挙げられます。「令和5年版内閣府高齢社会白書」によると、2022年時点で3,623万人である国内の65歳以上の人口は、2040年には3,928万人、2043年にはピークを迎えて3,935万人まで増加する見通しです。高齢者の増加に比例して要介護認定者も増えるため、2040年までに2019年度の約1.33倍もの介護職員を確保しなければ対応できなくなります。

2021年の介護労働安定センターの調査では、介護サービス事業者8,809社のうち、従業員が不足していると回答した事業者は63.0%に上り、慢性的な人手不足がうかがえます。
また。現時点で65歳以上の労働者がいる事業者は68.0%を占めています。今後高齢の介護職員が増えるにつれて離職者が増えたり、1人あたりが担当できる業務量が減少したりすることも考えられるでしょう。

人材には限りがあります。介護職員の人材不足への打開策として、AI活用が求められています。

関連記事:介護DXとは? メリットと課題・対策、導入事例を紹介

関連記事:介護業界の今後|2025年・2040年問題に向けた課題と対策

参照元:令和5年版高齢社会白書

参照元:令和3年度介護労働実態調査 

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介護業界でのAI活用方法

介護業務は以下のように多岐にわたるため、AI活用方法もシーンにあわせてさまざまなことが考えられます。

  • 入浴に関する身体介助などの直接介助
  • 食事の準備、ケア記録の入力などの間接介助
  • 業務上の庶務などの間接業務

たとえば、ケアプランや介護計画書の作成は、一般的なツールを利用しても作成は可能です。しかし、AI搭載型システムを活用すれば、膨大なデータをもとにAIが最適なプランを作成してくれます。介護スタッフは最終的な判断のみをすればよくなり、負担は大いに減ることとなります。

AIは、蓄積されたデータをもとに自ら学習し、業務遂行までを担います。介護施設での見守りや、送迎業務の支援など、マンパワーにかわり活用できる場面は、今後ますます増えることが予想されます。

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介護業界でのAI活用によるメリット

前述の通り、介護業界でもAIは多岐にわたって活躍します。ここでは介護業界でAIを活用するメリットを紹介します。

介護職員の負担を軽減できる

介護ロボットやAI搭載ツールを活用することで、介護職員が行っていた作業の一部を自動化・省力化でき、作業負担を軽減できます。

たとえば、ベッド・浴槽間などの移乗作業の際には、利用者を手伝う職員が腰を痛めることがあります。移乗作業に介護ロボットを使用すれば、介護職員の肉体的な負荷の軽減が可能です。65歳以上の介護職員も少なくありませんが、作業負荷を軽減できれば年齢によらず担当できる業務範囲が広がります。

入浴支援・移動支援・排泄支援などが行える介護ロボットは、現在、AI搭載型の開発・製品化が進められています。AI搭載型ならロボットを操作する職員も不要になるので、広く普及すれば、職員の業務負担は大幅に改善できるでしょう。

また、見守り・事務支援・送迎支援のシステムなどにもAIが導入されています。見守り支援システムでは、AIが居室やトイレなどを見守り、異常動作を検知し、状況判断までを行います。AIに常に利用者を見守ってもらえれば、見回りなどの職員の業務負担を軽減することが可能です。

介護の質が向上する

AI搭載ツールの利用により介護職員の業務負担が軽減できると、職員の勤務態勢に余裕が生まれます。見回りや事務作業などのルーティンワークをある程度AI搭載ツールに任せることができれば、その分の時間を、利用者とのコミュニケーションなどに使えます。利用者とのコミュニケーションが普段からとれていれば、利用者に寄り添った、きめ細やかなサービスの提供が可能になるでしょう。

また、入居者に関するデータを有するAIツールでは、介護プランの提案も可能です。少人数の職員の観察のみではすべてを把握することが難しい、入居者の体調や行動情報などから最適な介護プランをAIが作成します。それにより介護職員は、本来の介護業務そのものに時間をとることができるようになり、介護の質向上へとつなげられます。

スピーディーな対応が可能になる

介護業界でAIを活用するメリットのひとつに、事務作業や確認作業にかける時間を短縮できる点があります。従来、一人ずつ確認していた健康状態のモニタリング作業や、介護記録作成をAIに任せられれば作業スピードを大幅にアップすることが可能です。人手不足で作業時間を捻出できず残業が発生していた企業では、労働環境の改善も見込めます。

ほかにも、市町村の担当部署が行う要介護認定事務では、申請書の入力や審査作業の作業スピードは個々のスキルに依存します。しかし、AIが入力業務などの一部作業を代わりに行えば、誰でもスピード感を持って対応することが可能になります。

介護業界でのAI活用によるデメリット

AIは便利な技術ですが、妄信するのは危険です。上手く活用できれば介護職員の負担を軽減できますが、利用にはリスクがあることを頭に入れておきましょう。ここでは、介護業界でAIを活用するデメリットを紹介します。

人間による確認が必要である

介護AIは人手不足を補える優れた技術ではあるものの、万能ではありません。その精度は100%ではないため、すべての作業を任せるのは難しく、最後は人による確認作業が必要です。導入前に安全に利用できるか確認するのはもちろん、導入後も利用者の安全確保のためにチェックを行います。

ケアプランの作成や見守りなどを完全にAIに任せるのもリスクがあるため、必要に応じて、都度確認を行いましょう。あくまでも補助的な役割としての利用と捉えることが大切です。

導入にあたってコストがかかる

介護サービス事業者がAIを導入するには、まとまったコストがかかります。AI技術の活用といってもさまざまですが、移動介助型・入浴支援型ロボットなどはいずれも1台あたり100~200万円程度の導入費用が必要です。見守りシステムやコミュニケーションロボットの導入も数十万円から100万円ほどかかります。

予算の都合でAI導入を諦めている事業者も少なくありません、実際に、介護労働安定センターの調査では「いずれの介護ロボットも導入していない」と回答した事業者が80.9%に上りました。

導入の課題としてコストが高いと回答した介護サービス事業者は多く、訪問系では40.0%、入所型の施設系では63.5%、通所型の施設系では55.4%、居住系では58.8%、居宅介護支援では22.9%を占めました。導入コストの高さが、AI普及が進まない要因のひとつとなっています。

参照元:令和3年度介護労働実態調査

介護業界でのAI導入にあたっての課題

AI搭載ツールを介護業界で導入するにあたり、一番の課題はコスト面だと考えられています。初期導入費用はもちろん、維持費やメンテナンスなどにも費用は必要です。それらを考えると、費用対効果が少ないと考える事業者もいるかもしれません。

また、新しい機器を導入すれば、操作を覚える必要性がでてきます。そのため、AI導入に否定的な意見を持つ介護職員が存在する点も、課題のひとつです。実際に、介護労働安定センターの調べでは、「介護ロボットの導入や利用についての課題・問題」について「技術的に使いこなせるか心配である」と回答した事業者が全体の32.2%、「誤作動の不安がある」と回答した事業者が32.4%に上りました。知見が求められるので、導入に高いハードルを感じる人達が一定数存在します。

さらに、見守りタイプのAIはカメラで行動を分析するので、利用者の尊厳を傷つける恐れもあります。AIは上手く活用すると便利な一方で、利用者のプライバシーに配慮する必要があるなど、導入時には注意が必要です。

参照元:令和3年度介護労働実態調査

介護業界でのAI活用事例

介護業界におけるAI活用事例を紹介します。介護施設以外でも活用・応用できる技術もあるので、自社にAIツールを導入するときの参考にしてください。

デジタル技術をフル活用した迅速な要介護認定事務

AI技術は、介護施設以外にも各自治体の介護保険担当部署などで役立てられています。要介護認定事務の作業負担を軽減させる取り組みに活用可能です。認定調査票の確認などをAIに任せると、個人による判断のばらつきを防げて、素早いサービスの提供を実現します。

実際に福島県郡山市では要介護認定事務の負荷を軽減させるために、AI技術を導入しました。2022年度から「DX郡山推進計画」を策定し、事務作業の各フェーズの業務改善を実施しています。もともと、要介護認定の希望者が年々増加し、申請から認定まで通常30日以内で処理する必要があるにもかかわらず、40数日かかっていました。しかしAI技術の導入によって調査票の確認作業にかける時間が60%短縮され、平均処理日数を35.7日まで短縮できました。

また、要介護度や利用者に合わせたケアプランや介護計画書の作成にもAIツールは活用可能です。工数をかけていた事務作業の負担が軽減できるようになります。

参照元:Digi田甲子園「福島県郡山市」

高齢者の見守りや緊急時の情報発信

AIは、介護施設利用者の見守りシステムや見守りロボットにも搭載され、活用されています。見守りシステムは個室にセンサーを設置し、利用者の行動データを分析します。AIが入居者の行動パターンを学習し、異常行動による通報の要否を判断するため、アラートが誤作動して不必要に鳴る心配がありません。完璧に任せられるものではなく、依然として人による確認作業が必要であるものの、従来よりも介護者の業務負担を大幅に軽減します。

介護施設以外でも、個人への貸し出しなどで自治体がAIを活用している事例もあります。
静岡県藤枝市では、見守りロボットを活用したサービスを開始しました。一人暮らしの高齢者の生活を見守り、サポートするために決まった時間に写真を撮って家族へ送信するほか、緊急写真撮影や緊急連絡の機能を搭載しています。音声認識のAI技術やクラウドサービスを活用したコミュニケーションロボットが見守るサービスは、滋賀県長浜市や、福井県坂井市などの自治体でも活用されています。災害時にはロボットを通して避難情報を伝えられるので、高齢者が逃げ遅れるリスクを低減することも可能です。

参照元:地域社会のデジタル化に係る参考事例集

送迎業務支援システム

AIの活用事例には、送迎業務の支援システムもあります。

AIが搭載された送迎支援システムでは、ツールにもよりますが、利用者の条件にあわせて、送迎計画・送迎ルートの自動作成が可能です。使用車両や移動時間、乗車人数や積載量といった条件をあらかじめ設定することで、送迎計画をワンクリックで作成できます。

また、送迎計画にもとづいてルート案内もできるため、道に不慣れなドライバーでも効率的な送迎を実現します。走行履歴も記録でき、ドライバーの運転を客観的に評価できます。安全運転の意識を向上させ、事故防止に貢献します。一日の活動内容や走行経路などを記録した日報の自動作成ができるツールもあり、業務負担の軽減が期待できるでしょう。

AIによる会話での介護負担解消

高齢者の話し相手としても、AIが注目されています。会話が得意なコミュニケーションロボットを採用することで、人との対話に近く、画面上の二次元のキャラクターに話しかけるよりも発話量が増加します。ロボットを通したコミュニケーションは孤独感の解消につながるほか、レクリエーションで歌や踊りを一緒に踊ることでフレイル(加齢により気力や体力が低下した状態)の予防が可能です。

特にスタッフが不足する夜間に効果的で、介護スタッフが利用者の話し相手になってしまい業務が進まなくなるといった問題が解消されます。また、日中にロボットの相手をするため、高齢者の活動量が増えて寝つきが良くなり、生活習慣の改善も可能です。

まとめ

AI搭載システムは、移乗支援を行う介護ロボットから、介護計画や介護施設利用者の送迎支援を行うシステムまでさまざまなものがあり、多様な形で介護の現場をサポートできます。

介護業界でAIを活用すれば、職員の負担軽減、ひいては人材不足解消につながります。ただし、AIの導入にはコストがかかり、操作性に不安をおぼえるスタッフもいます。AI搭載ツールを導入する際は、これらの課題を踏まえたうえで自社業務に活用することが大切です。

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