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観光業界はこれからどうなる? 最新の動向やDX推進について解説!

新型コロナウイルス感染拡大により、観光業界は大きな打撃を受けました。成長産業としての期待が高く、東京オリンピックに向けてさらなるインバウンド効果が見込まれていましたが、コロナ禍によりさまざまな変化が訪れました。本記事では、観光業界の今後の展望と解決すべき課題、観光庁の示す観光DXのあり方、観光業界で取り入れたいDXの施策について解説します。

観光業界はこれからどうなる? 最新の動向やDX推進について解説!

観光業界のこれまで

突如始まった新型コロナウイルスの感染拡大は、観光業界に大きな影響を与えました。コロナ以前とコロナ禍で、どのような変化が起きたのかを振り返ります。

快調だったコロナ以前

コロナ以前、観光業界は順調に成長していました。日本政府観光局の統計資料「ビジット・ジャパン事業開始以降の訪日客数の推移(2003年~2021年)」によると、訪日外国人旅行者は2013年に1,036万人、2019年には過去最高の3,188万人となっていました。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、東京や大阪などの都市部、京都などの観光地にはホテルなどの宿泊施設が次々とオープンするなど、インバウンド効果に大きな期待が寄せられていたことがわかります。

さらに政府は、観光先進国への改革として、2016年に「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定していました。その中では、訪日外国人旅行者数を2020年に4,000万人、2030年に6,000万人、訪日外国人旅行消費額は2020年に8兆円、2030年には15兆円という目標が掲げられています。このように、コロナ以前の観光業界は、成長市場であると期待が高まっていました。

参照元:日本政府観光局「ビジット・ジャパン事業開始以降の訪日客数の推移(2003年~2021年)」
参照元:観光庁「明日の日本を支える観光ビジョン」

変化が生じたコロナ禍

大きな成長が期待されていた観光業界ですが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、多大な影響を受けることになります。コロナ禍では、世界中の人々が旅行を控え、航空便の本数も大幅に縮小されました。そのため、2019年には3,188万人を記録した訪日外国人旅行者数は、翌年マイナス87.1%の412万人となっています。

また、国内旅行においても移動の自粛要請などの理由により、旅行者が大きく激減しました。加えてテーマパークなどのレジャー施設も休業を余儀なくされるなど、コロナ禍の観光業界における損失は極めて深刻なものとなりました。この深刻な状況に、政府は各種支援策や補助金などを創設し、雇用維持のための予算を立てるなどの施策を行っています。

コロナ禍では、観光客の価値基準が変化したことも大きなポイントです。人混みを避けられるマイナーな観光スポットや、地域に根付いた観光スポットなどへの旅行を選ぶ傾向が見られはじめました。これまでは安さや利便性を重視していたところ、対価を払ってでも安心・安全が提供される観光を選ぶ傾向も見られます。

参照元:日本政府観光局「ビジット・ジャパン事業開始以降の訪日客数の推移(2003年~2021年)」

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観光業界の課題

コロナ禍を経た今、観光業界における大きな課題として人材不足とオーバーツーリズムが指摘されています。

人材不足

コロナ以前から、観光業界は離職率が高い傾向にありました。休日の少なさ、低い賃金水準、労働環境の厳しさなどが主な要因とされています。加えてコロナ禍における人員整理などで離職した従業員も多く、人手不足は観光需要が回復しつつある観光業界にとって深刻な課題です。

帝国データバンクが2023年4月に行った「人手不足に対する企業の動向調査」における業種別の人手不足の割合を見てみると、「旅館・ホテル業」が正社員で75.5%と最も高く、非正社員でも2位の78.0%という結果でした。コロナ禍で落ち込んでいた需要が急に戻りはじめたことで、人材の供給が追いつかない状況であることがわかります。

参照元:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4 月)」 

オーバーツーリズム

オーバーツーリズムとは、観光客の急激な増加により地域が対応できなくなることや、地域住民および自然環境などに悪影響を及ぼす状況であることを指します。これは日本の問題だけではなく、世界中の観光地において問題となっている現象です。もともとコロナ以前から問題視されていましたが、行動制限がなくなったことで人の流れが急激に増加し、さらに深刻な状況になることが危惧されています。

地域としては、観光客が増えることで多くの経済効果が期待できますが、自然環境や地元の人々の暮らしも守らなくてはなりません。オーバーツーリズムによって渋滞や騒音、一部の観光客によるマナー違反などが起これば、観光資源である文化財や自然、住民の生活に悪影響をおよぼしかねません。近年では、このようなことが起こらないよう、オーバーツーリズム解消の手段として、デジタル技術を活用するスマートツーリズムが注目されています。

関連記事:スマートツーリズムとは? デジタル化に取り組む観光事例も紹介

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観光業界のこれから

コロナ禍による大打撃を受けた観光業界には、今後どのような展望があるのでしょうか。

コロナ後に期待される需要増

コロナ禍でも、国内旅行においてGoToトラベルや全国旅行支援などの支援策により一時的な需要の回復がありました。2023年5月には新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが変更され、今後さらなる需要増が期待されています。

観光庁の「令和5年版観光白書について」によると、訪日外国人旅行者数は、2022年6月の外国人観光客受け入れ再開、10月の入国者数の上限撤廃など、水際対策の緩和により大きな回復が見られました。さらに、2023年4月には、2022年10月以降で単月では最多となる194.9万人の旅行者数を記録しています。2019年の同月と比べても66.6%まで回復していることから、コロナ以前の勢いを取り戻しつつある状況です。

一方の国内旅行に関しても、日帰りと宿泊の延べ人数が2021年の2,681万人から2022年は41,785万人と回復傾向が見られます。2025年には大阪万博を控えていることから、観光業界ではさらなる需要増が期待されている状況です。

参照元:観光庁「令和5年版観光白書について(概要版)」

円安によるインバウンド効果

2022年10月からの入国制限の緩和により訪日外国人旅行者数は回復してきましたが、円安の加速もインバウンドの効果を後押ししています。円安を背景に外国人旅行者の消費額(試算値)は回復傾向にあります。観光庁の「令和5年版観光白書について」によると、2020年は7,446億円、2021年は1,208億円と落ち込んでいた消費額は2022年に8,987億円となりました。また、四半期別の調査では、2023年の1月~3月期に10,145億円となり、2019年の同期と比べても88%ほどの回復が見られます。

今後は、日本ならではの治安の良さや食事の美味しさ、安価でできるショッピング、きめ細やかな接客、日本でしか体験できないアクティビティなど、日本の魅力をアピールすることで大きなインバウンド効果が期待できます。円安を背景としたインバウンドによる経済効果は、今後の観光業界にとって重要なファクターです。

参照元:観光庁「令和5年版観光白書について(概要版)」

サステナブルな観光の重視

世界的にSDGsへの取り組みが加速する中、その土地の文化および環境の保全を優先的に考える観光手法であるサステナブルツーリズムに注目が集まっています。商業的な観光業によって引き起こされる環境破壊を防止し、その土地の自然や文化を生かした地域に寄り添う観光地づくりをすることで観光を活性化させる取り組みです。近年は世界中でサステナブルツーリズムへの取り組みが盛んになっています。国連では、観光に対する持続可能性を測るための指標としてサステナブルツーリズム国際認証を設けているほどです。

サステナブルツーリズムへの取り組みとして挙げられるのは、地域の自然環境を生かしたアウトドア系アクティビティや、地域の伝統や歴史に親しむ文化体験などです。どちらもその地域の魅力を観光客に知ってもらうための取り組みであり、そこに暮らす住民の暮らし向上にも寄与します。

観光DXの促進

DXとはデジタル技術を活用することで、これまでの暮らしや産業に変革をもたらすことです。観光業界でもその取り組みが行われており、観光DXとして国も推進しています。観光業界では、深刻な人手不足やコロナ禍による利益の減少、生産性の低さなどの課題がありますが、DXを推進することでこれらの課題解決に寄与します。さらにニーズに応えたサービスの提供や新しいビジネスモデルの創造などが期待できます。

しかし、観光業界のDXはほかの産業と比べ遅れていると言わざるを得ません。総務省が公表した「令和3年版 情報通信白書」によると、DXの取組状況を尋ねたところ、宿泊業、飲食サービス業では「DXを実施していない、今後も予定なし」と回答した割合が65.8%にものぼりました。DX推進には、DX人材の育成や導入コストなどが必要ですが、業務改善などの課題の解決やより良いサービスの提供など、多くのメリットが得られます。

参照元:総務省「令和3年版 情報通信白書」

関連記事:観光dxとは?国内外の取り組み事例から見える観光業界の問題点」

観光庁が提唱する観光DX推進のあり方

観光庁では、過去7回にわたり「観光DX推進のあり方に関する検討会」が開かれ、2023年3月、最終取りまとめが公表されました。ここでは、4つの柱を軸とした最終取りまとめに沿って、観光DXのあり方を解説します。

参照元:「観光DX推進のあり方に関する検討会 | 委員会、審議会等 | 観光庁」

旅行者の利便性向上・周遊促進

これまでは、観光客が自らインターネットなどを利用してさまざまなサイトで情報を探していました。その際、求めていた情報をひとつのサイトで探すことが難しく、さらには予約・決済にも手間取ってしまうなど、効率的にいかない場面が多々ありました。

これらの課題解決の手段として挙げられるのは、観光客がよく利用するGoogleやOTAなどへの情報掲載の徹底や、スマートフォンや顔認証などを用いた予約・決済のスマート化の実現です。さらに、現在地や周辺状況に合わせた最新の情報提供ができるようなシステムの構築も推進します。

観光産業の生産性向上

観光業界では生産性の低さが指摘されています。DXがほかの産業よりも遅れていることもあり、売り上げ・コスト・予約管理などの効率化が進んでいないのが現状です。また、デジタルツールを導入していてもそれぞれに仕様が異なり、事業者間において宿泊・予約に関する連携が進んでいないという課題もあります。

このような課題への解決策として挙げられるのは、データ管理業務の自動化やデータ共有・連携機能の強化です。自動化により業務効率化が実現し、それにより生まれた資源をサービス品質向上や、新しいサービスの創出に利用できます。業務が効率化することで、従業員のモチベーション向上や労働環境の改善にもつながります。さらに、データの共有・連携によって需要の予測ができ、価格やコストの適正化も実現可能です。

観光地経営の高度化

これまで、観光地域づくり法人(DMO)などでは、必要なデータの集約や整理が行われていませんでした。そのため有効なデータを意思決定に活用できず、戦略の策定も難しい部分がありました。このような課題への解決策として、まずは観光地域づくり法人などにデジタル化およびDXが盛り込まれた経営戦略の策定を推進します。デジタル化・DXにより、消費、移動などに関する観光客のデータを収集・分析することで、新たな戦略を立てることが可能です。

新たな戦略として、例えばレベニューマネジメントが挙げられます。レベニューマネジメントとは、おもに宿泊業におけるマネジメント手法であり、需要予測に合わせた価格設定を行うことで収益を拡大させる手法です。CRM(顧客関係管理)やDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)などのシステムを導入することで、需要予測や効果検証が可能となることから、観光地経営を行うさまざまな地域でDXと共に推進されています。

観光デジタル人材の育成・活用

観光業界におけるデジタル人材の不足は、DXを遅らせる原因のひとつです。DX人材登用の資金には限りがあり、DXに関するノウハウの蓄積も困難となっていました。また、経営層においてDX人材の育成に対する意識が低く、人材育成プログラムやDX人材への処遇も不十分であるといった課題もあります。

このような課題への解決策として、外部人材の活用や人材育成プログラムの質向上、経営層の人材育成に対する意識向上などの施策が挙げられます。経営層や組織、観光DXに従事する人材に対して、リカレント教育の機会創出や観光人材育成ガイドラインの策定などを推進することで、観光DXの加速を促します。

今後の観光業界が取り入れるべきDX

観光業界がDXを推進するために、今後取り入れるべき施策を解説します。

観光アプリ

観光アプリは、観光客の嗜好を把握し、それに基づいた情報を提供することを目的としたアプリです。観光客は、旅の最適なルートや周辺の施設情報にアクセスでき、目的のスポット周辺に来たらプッシュ機能で通知されるなど、求めている情報がスムーズに取得できます。また、事業者にとっても観光客のニーズに応えた情報を提供できることで、集客やサステナブルツーリズムの実現が期待できます。

一方で課題もあります。地域を限定した観光情報だけを提供するアプリでは、観光客のニーズに合わない可能性が高く、普及も困難です。そのため、観光客の行動形態に合わせた周辺情報の提供や、交通や飲食などの情報を提供する機能と連携させるなどの工夫も求められます。

観光庁でも、観光DX推進プロジェクトとして、観光客の利便性向上や観光地経営の高度化を図るため、多くの実証事業を行っています。観光庁主導のアプリもあり、観光DX推進のモデル実証を実施しています。

AR/VRなどのテクノロジー

観光DXには、ARやVR などの最新テクノロジーの利用も欠かせません。ARとは「拡張現実」のことであり、現実の世界にデジタルの情報を追加して拡張する技術です。VRは「仮想現実」と呼ばれ、目の前にデジタルで作り出した映像を投影し、まるで現実世界のように錯覚させる技術を指します。これらの技術を活用することで、満足度の高い観光体験を提供することが可能です。

例えば、立ち入りが困難な観光スポットをARやVR を使い体験することや宿泊施設の映像をVRで確認することなどができます。とくにVRでは、高齢などのさまざまな理由により旅行に行けない人にも、同行者として疑似体験旅行を提供することが可能です。また、旅行前の下見としての活用もでき、実際に訪問した際のミスマッチを回避して満足度の高い旅行につなげられます。

しかし、ARやVR設備の導入やコンテンツの制作には一定のコストがかかることが、導入に対する懸念材料となっています。そのため、得られる効果をしっかり見極めたうえで取り組みを進めることが大切です。

まとめ

観光業界はコロナ禍で大きな変化が生じ、利益の減少だけでなく観光客の価値基準も変わりました。コロナ禍を経た今でも、観光業界には人材不足やオーバーツーリズムといった課題があり、今後の需要増やインバウンド対応に向けて解決する必要があります。

そのためには、サステナブルツーリズムの導入や観光DXの促進が重要な鍵となります。これらを推進することで、観光客および事業者のどちらもメリットが得られます。観光客にとっては情報取得の効率化や地域の魅力が存分に体験でき、事業者にとっては、サステナブルな運営や高品質なサービスの提供、業務効率化による労働環境の改善などが期待できます。

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